診療所「適正化」提言に日医会長が異議 地域医療の持続へ必要な視点
診療所「適正化」提言に日医会長が異議 地域医療の持続へ必要な視点
日本医師会の松本吉郎会長は6日の定例会見で、財政制度等審議会分科会が診療所の機能や報酬の在り方に踏み込んだ提言を示したことについて「危機感が全く感じられず遺憾だ」と述べ、地域医療の現実を踏まえた議論を求めた。外来・在宅・救急の役割分担、高齢化と多病併存の進行、医師偏在や人手不足、夜間休日の体制確保、医療DXのコスト負担、物価高による光熱費・医療材料費の上昇など、現場は課題が山積していると指摘。単純な“適正化”の名の下に報酬を削減すれば、脆弱な地域から医療が後退し、患者の移動負担や救急受け入れに跳ね返ると懸念を示した。会長は、診療報酬改定はアウトカム指標と質の評価、地域包括ケアとの連動、医療・介護・公衆衛生データの連結を通じて、患者中心の持続可能性を高める方向で再設計すべきだと主張。かかりつけ医機能の評価や多職種連携、勤務環境改善と医療安全投資、遠隔医療やPHRの標準化などを例示した。同時に、物価高と賃上げの波が医療現場の経営を圧迫している現状に言及し、必要なコストを埋める財源手当てと、地域差に応じた柔軟な運用の重要性を強調。患者には受診の適正化やお薬手帳の活用、健診・予防の徹底を呼びかけ、国には説明責任とデータ公開、長期ビジョンの提示を求めた。今後の議論では、医療提供体制の再編だけでなく、地域交通や住まい、就労支援といった社会資源の総動員が不可欠だ。医療の“適正化”は削減ではなく、必要なところに適切に資源を配分する設計を意味する。会長は「人口減少社会で医療を守るには、現場への投資と働く人への敬意が要る」と述べ、拙速な制度変更より実証と対話を積み上げるプロセスを訴えた。診療所は地域の“入り口”であり“最後の砦”でもある。数字に現れにくい価値を丁寧に測り、地域差を尊重した制度設計へ。安心と納得を両立させる対話の場づくりが、次の改定の質を決める。現場の声を起点に。実装重視。今。
出典:毎日新聞|日医会長 会見(2025/11/06)
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發布日期:2025-11-06